第5回日本薬局学会 学術総会

会期:2011年11月5日(土)・6日(日)/会場:幕張メッセ国際会議場(千葉市美浜区中瀬2-1)/主催:(社)日本薬局学会、(社)日本保険薬局協会

『SP(模擬患者)からみた真に求められるかかりつけ薬剤師とは?』

講師:佐伯 晴子(東京SP研究会代表)
司会:小栁 悟(クオール株式会社)

略歴 佐伯 晴子先生

1977年大阪外国語大学ロシア語学科卒業
インターグループにて国際会議事務局、通訳派遣業務を担当
1988年〜1993年イタリア・ミラノ滞在 ミラノ国立がんセンター内の欧州緩和ケア
協会事務局にてボランティア活動
1995年東京SP(模擬患者)研究会設立世話人、事務局担当
2002年から東京SP研究会代表 http://www.tokyosp-kenkyukai.com/
東京慈恵会医科大学などで非常勤講師、日本医学教育学会評議員
厚生労働省社会保障審議会医療部会等で委員を務める
東京医科歯科大学大学院MMA医療政策学修士課程単位取得満期退学
2010年
4月から
「調剤と情報」(じほう)にて「ようこそ!てんびんカフェへ」
「てんびんさんのひとりごと」を連載中
現在厚生労働省薬事・食品衛生審議会医療機器安全対策部会委員
東邦大学・群馬大学・東海大学医学部非常勤講師
東京都福祉保健局医療政策部 医療情報に関する理解促進委員会委員


著書

あなたの患者になりたい~患者の視点で語る医療コミュニケーション~(医学書院)
話せる医療者 シュミレイテッド・ペイシェントに聞く(医学書院)共著
行動目標達成のための「医療面接」ポイント50 (日本医療企画)

要旨

SP(Simulated Patient:模擬患者)とは医療者に症状を話したり、質問に答えたり,
説明を受けたりする医療面接での患者役のことである。SPは、症状や状況はあらかじめシナリオを作成して記憶しておき、メモなどをいっさい見ないで患者役を演じる。医療者と信頼関係をつくることに目をむけるために、初診や初対面の場面を設定することが多い。
 模擬患者のシナリオの中心となる部分は、身体の調子が悪くなった様子であるが、コミュニケーションに焦点を当てるために、状態としては普通に歩け、普通に話も出来るという程度の設定とする。また、患者家族や施設利用者としての設定もあるので、医療や介護のさまざまな状況や場面を題材にできる。コミュニケーション教育の初歩の段階では、時間的に余裕がある設定のほうがじっくり取り組め、効果を生む可能性が大きい。医療や介護の実際の現場では短時間で省略した面接にならざるを得ないかもしれないが、信頼関係づくりの基本を押さえた上での省略なのか、信頼関係は後回しの「効率」優先なのかで、患者・家族・利用者からその後もその医療者との関係を継続したいかどうか分れるだろう。
 SPは演技をしながら、相手の話し方や態度について「患者としてどう感じたか」を感想として述べる。役になりきって薬剤師と話しながら自分の感情に気付き、相手の印象をつかむという作業をする。「自分は相手をどのように受け止めて、最後はどんな気持ちになったか」をつかんでいく。SPが口頭で感想を述べるときには、必ず相手役の状態をみて、適度に加減しながら、大事な点だけを簡潔にまとめる。相手役の薬剤師は、自分の服薬指導についてどうすればよかったか、いけなかったところはどこかなどは、ある程度自分でわかっているものであり、追い討ちをかけるようなことは避け、翌日から前向きに患者と向き合う気持ちになれるように心がけて、感想を述べるようにする。SPにとって良かったこと、うれしかったこと、具体的に気付いたことを率直に語るようにしている。
 服薬指導において、患者の側から、実際にはどう感じているのか伝えることで薬剤師と患者との信頼関係の構築という面で参考になることも多いと考えている。薬剤師にとって、服薬指導でいかに患者から情報を引き出すか、聞き出すか、心を開かせるかが重要である一方、患者にとっては服薬指導ではなにが一番重要になるのだろうか。自分にとって「最適」な治療をしてほしいと誰もが希望している。「最適」の具体的な中身には、確かな薬物療法と同時に、自分を支えてくれるという信頼が含まれている。信頼という目に見えないものについての評価は困難であるが、初対面の服薬指導で患者が次回もこの薬剤師にかかりたい(自分のかかりつけ薬剤師になってほしい)と思うかどうかが、最初の信頼の目安となると思われる。その最初の信頼のかぎを握っているのが基本的態度とコミュニケーション能力である。言葉遣い自体はていねいで、患者を一人の人間として尊重し、落ち着いた態度で、患者の目を見ながら、話に耳を傾けることの出来る薬剤師であるにもかかわらず、その患者にとってあまりコミュニケーションが上手くいかなかったと感じることもありうる。思いがあってもズレは生じることがある。ズレをどうすれば防ぐことができるか。
このワークショップではSP(模擬患者)の視点から薬剤師の服薬指導について、率直に感想を伝えていくことで「真に求められるかかりつけ薬剤師とは?」ということを考えていきたい。